NOVELIFE

読了した小説のささやかな記録。

『天使のナイフ』薬丸岳

だが、他人にその人間の本心などどれだけわかるというのだろう。(本文より)


わかるわけがない。本心を隠していない人間なんかいないと思う。僕だってそうだ。


だから、無関係の人間が、事件の真相を暴こうなどと、必死になる様子を見るのは好きではない。というか嫌いだ。


好奇心や興味をそそられるのはわかるんだけどね。それをペラっと人前で話す人間の想像力の無さ。偉そうにごめん。


真相なんて本人にしかわからないよ。どれだけ近しい人間でも。考え続ける。これしかない。死ぬまで。


つまりあれだね。これは、逃げ気味の人生を歩む自分への戒めになる小説であったということだね。


感想

少年法。罪と罰。贖罪。考えさせられる重々しいテーマ。読み進めながら、自分の心のベクトルはクルクルと回転。読了しても、当然のごとく固定などされない針。


でも、ただ重々しいだけではなく、読み手を優しい気持ちにもさせてくれる。そして、エンターテイメント性もかなり高く、どんどん読み進められた。ミステリ要素もしっかり。素晴らしい構成力。


時折読み返し、この小説のテーマについて考える時間を持ちたいな。

『臨床真理』柚月裕子

朝晩だいぶ涼しくなってきた。というかむしろ寒いくらい。もうすぐ岩手に雪が降る季節がやってくる。いや、まだ気が早いかな。笑


そう、僕は岩手に住んでいる。


そして先日知った作家、柚月裕子さん。僕と同じ、岩手出身だった。それだけで読む動機となるのは言うまでもない。あんまり作家さんの出身地など気にする事はないのだけど、同郷となれば話は別だった。


デビュー作から読んでみようか、という気になり、今回の『臨床真理』を購入。そして読了。第7回『このミス』大賞受賞作。

感想

まず一言。とにかく読みやすかった。最後まで、特に違和感を感じることなく読了。平坦と言えば平坦だけど、それでも読み進められたのは、その流れに滞りを感じることがなかったから。流れが綺麗。


障害者施設の闇や、障害者の性など、テーマは重いけど、重圧感はなかった。特に終盤までは、かなり緩やかに進む。終盤になりサスペンス感が増し、ドキドキ。ただ、その終盤のある場面。僕としては、いらない描写だと思ったけど、柚月さんにしてみたら、きっと必要だったのだろう。あれを女性が書いた、ということが重要な気もする。


深く入れ込むような個性的な登場人物はいなかったけど、それぞれの人物がバランスよく描かれていたように思う。素晴らしいストーリーの流れの中で、個性的で、且つ僕が気に入ってしまうような登場人物が現れるようなことがあれば、文句なくお気に入りの小説となるだろう。


また別の、柚月裕子さんの小説を読もうと思う。

ブログ論

いや違うのだ。ブログ論を語る、なんてそんな大それた話ではない。


どのようなブログにしようか。未だにフラついているのだけど、一旦落ち着いて考えてみようかなと思った次第。節目だし。

始めて一年が経つ


本を読んでも、時間が経つと内容をすっかり忘れてしまう僕は、アウトプットすることで、少しは解消するかも、と思いブログを書くことに決めた。


約一年ほど紆余曲折ありながら、続けてきた。が、忘れっぽいところは特に変わらなかった。笑


ただし、文章を書く楽しさは知ることができた。書きたいという欲が湧くようになった。


あくまでも、自己満足でしかないのだけれども、多からず読んでくださる方がいて、反応していただいたりすると、とても嬉しい。


ただ、その反応を気にしすぎて、自分の意見を率直に言わないのでは、ブログを書く意味がない。


人の役に立つ記事を書く。確かにそういうつもりで書くことに意義はあるかもしれない。けれども、僕としては、忌憚なく思いのままを書き、結果として、そういう記事になればいいね、というくらいが丁度いい。


とは言えね。やっぱり読んでもらいたいし、良い反応が欲しいな、という気持ちは少なからずある。そこら辺の葛藤は常に持ち続けていくのだろうなと思う。これはしょうがない。


まあ、考えすぎずに進もう。


では次。

ポリシー


一応このブログは、国内外の様々な小説を読んで、自分なりの感想を備忘録として書いていくつもりで、以前のブログとは別に、改めて始めたものだ。


あまり話題作など気にしないし、自分の読みたい小説を、読みたい時に読むので、一貫性もなく、作家さんなどもバラバラになると思う。まあ、それはいいとして、感想を書く時に気をつけたいことがある。


それは、ネタバレするような事は書かない。ということ。さらに僕は、あらすじでさえも、ネタバレになる可能性があると思っているので、出来る限りあらすじも書かない。


最近では特に、ミステリ小説を読むことが多いので尚更だ。ネタバレを思いがけず見てしまった時のショックは大きい。見た自分が悪いのだけど、書いた人を憎んでしまう。笑


だから、僕は書かない。コレだけは守っていきたいポリシーだ。


それと、評価。以前はこの評価というものを点数にして表してみたりしたのだけど、これまたどうも自分にはしっくりこなかった。そもそも僕はいわゆる理系で、数字好きだし、順位付けしたりするのは嫌いではないのだけど、上手くできなかった。そもそも比べるものでもないのかなと思った。ので、やめた。


比較対象として、別の小説を紹介することはあるだろうけど、微妙な優劣の点差を付ける自信はない。結局、好きか、そうでもないか、というくらいでしかないのかもしれない。(嫌いというのは中々ない)

理想はエッセイ


ということで、結論としては、小説を読んで、感じたことを忌憚なく、内容には深く触れないように、自分の日常と絡めて書く。というスタイルに、今のところ落ち着きそうである。(一般的なスタイルのような気もするが。笑)


エッセイのような感じが理想かなと思う。


つらつらと思いのままに、文章を書きながら、さりげなく、読んだ小説について紹介されている。という形が僕の理想。あくまで理想。理想と現実は違うけど。


まあ、何にしろ、とにかく書いてみる。書いてダメならまた考える。


ああ。一年経っても、また同じこと言ってる。笑
変わっていないのだ。


そう。これが僕の現実。つまり僕のブログ論としては、「現実を現実のままに書く」ということになる。そんなこじつけをして、今日は終わりにしよ。

『テロリストのパラソル』藤原伊織

「そうさ。人間は陳腐への階段を降りていく運命にあるんだよ」(本文より)


僕はどのあたりまで降りてきただろうか。まあ、元々高い位置にいたとは思えないし、階段も緩やかだろうけど、確実に降りてきているという実感はある。


陳腐という言葉は悪い意味で使われることが多いような気がするけど、僕は嫌いではない。様々なものを通過した陳腐さはむしろ美しい。とさえ感じる。


人には様々な過去があり、それがどんなものであれ、その人の現在を形成している。そして暗い過去を持つ人も沢山いる。


そんな過去を持つ人物達の物語。藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』



感想

物語としても良くできているのだけど、何よりも登場人物がとても魅力的。それだけで十分読み進められた。


中でも、浅井。僕は一番惹かれた。詳しくは書かないでおく。


物語としては、真っ暗でもなく、明るいわけでもない中間色。全体的に灰色な印象。人間色。好きな雰囲気だった。


そして最後は切ない。青春小説とも言えるかも知れない。


多分、大抵の人が降りていくであろう陳腐への階段。その一段一段を噛み締めながら、踏み外さないように大切に降りていきたいと思う。

『真昼の悪魔』遠藤周作

表向きは常識がある人間のふりをしているが、心の芯は冷えた砂漠よりつめたい。そんな人間を私はたくさん知っている。そしてあなたはその人たちより正直なだけだ。(本文より)


正直な悪魔と嘘つきな悪魔。ただそれだけの違いなのだろうね。人間様は。

僕は嘘つきの悪魔だ。


ということで、遠藤周作さんの『真昼の悪魔』を読んだ。




感想

人間の闇を描いた、医療サスペンスという感じ。いや、医療に関して特に専門的な話は少ないし、社会派サスペンスといった方が近いかも。

とにかく、かなり引き込まれてしまった。さらに、出口のない迷路に迷い込んだ感覚。息苦しかった。

救いはなく、読後も重い。悪とは何か、考えさせられた。